伊勢崎賢治 基本政策(マニフェスト)
01
「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」
──その精神を日本の外交の羅針盤に。
沖縄戦の苛烈な体験から県民の間に定着してきた「命(ぬち)どぅ宝」――命こそ宝という考え方は、「国家の利益と個人の尊厳が衝突するとき、個人の尊厳こそ最も大切であり、守るべきだ」という重い教訓を含んでいます。この価値観は、平和を願い「命や尊厳を大切にする」精神の象徴としても語られてきました。
私は、この「命どぅ宝」を外交・安全保障のスローガンにとどめず、党派を超えて政治をまとめる「共通言語」として据えます。事実、私はガザへの人道支援を目的とした「超党派人道外交議員連盟」を運営し、与野党の議員と共に具体的な行動を起こしてきました。安全保障観や政策手段の違いがあっても、「守るべき中心にあるのは人の命と尊厳だ」という一点で合意をつくり、与野党・左右の立場を超えて協力できる土台を築きます。
目指す政治のかたち
1)党派を超えて結束するための軸を「命どぅ宝」に置く
対立が先行しがちな国会論戦でも、最終目的を「命を守る」にそろえることで、政策協議を成立させる「基準点」を明確にします。
2)「国益」概念を、人の命と尊厳から再定義する
「国家の利益が個人の尊厳にまさるものではない」という沖縄の教訓を踏まえ、命と尊厳を中心に据えた国益論へ転換します。
3)「軍事か非軍事か」の二項対立を越え、合意可能な実務へ落とし込む
軍事力だけでは住民の生命や財産は守れない、という経験則を直視しつつ、避難・医療・停戦仲介・人道回廊など、各党が合意しやすい人道措置を積み上げ、超党派の実行力に変えます。
結論
「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」を政治の中心に置きます。
立場の違いはあっても、守るべきものは同じ――人の命と尊厳です。
この一点で党派をまとめ、分断よりも連帯をつくる政治へ転換します。
02
「聖域なき米軍の自由」を終わらせる。
沖縄から始める、対等な日米関係への第一歩。
沖縄県のわずか0.6%の土地に、在日米軍専用施設の約70%が集中しています。
日米地位協定が結ばれてから60年以上。この「古くて不平等なルール」のひずみを、誰よりも長く、誰よりも深く背負わされてきたのが沖縄です。
しかし、これは決して沖縄だけの問題ではありません。この不平等は、日本という国が本来持っているはずの主権が、米軍の「特権的な自由」の前で踏みにじられていることの証明です。私は、沖縄からこの理不尽を問い直し、真に独立した国家としての「対等な日米関係」を築くために立ち上がります。
- 「無法なまでの自由」を終わらせる、「自由なき駐留」の実現
いま、日米地位協定によって守られているのは、米軍が享受する「無法なまでの自由」です。
沖縄や全国の基地周辺でPFASによる深刻な水質汚染が疑われても、汚染源である基地内への立ち入り調査すらできない。首都圏上空には、日本の航空機が自由に飛べない広大な「横田空域」が存在し続ける。事件・事故を起こしても日本の捜査権が及ばず、説明責任も果たされない。これは、一国の駐留軍としてあるまじき「過剰な自由」です。
私が目指すのは、「米軍に、無法な自由を許さない駐留」です。駐留軍であっても、その国の法律や環境基準に従うのは国際社会の常識です。米軍特有の「聖域」を撤廃し、日本の法と主権の下で活動する、当たり前の「自由なき駐留」へと改定を断行します。
- 世界の常識、「互恵性(お互い様)」を当たり前に
もし日本の自衛隊がアメリカに駐留するなら、当然アメリカの法律に従います。これが国際社会の「互恵性(相手と同じ条件で対等に付き合うこと)」の原則です。アメリカ自身、自国に駐留する外国軍にはこの原則を厳格に求めています。
しかし、なぜか日本だけがこの「お互い様」を適用されず、ドイツやイタリアといった他の友好国では認められている「受け入れ国の権限」さえ行使できないでいます。私は、この異常な状況を終わらせます。「日本だけが特別に不利」という構造を打破し、主権が尊重される公正なルールへと改定します。
- 知らぬ間に戦争の拠点に? 「朝鮮国連軍」のリスク
あまり知られていませんが、日本には「朝鮮国連軍」の基地があります。朝鮮戦争の休戦を管理する枠組みですが、横田基地に後方司令部があり、他にも7つの在日米軍基地が国連軍基地として指定されています。
恐ろしいのは、朝鮮半島で有事が起きた際、日本が国会の承認や国民の合意とは無関係に、「自動的に戦争の後方拠点」となり、攻撃の対象となるリスクを抱えていることです。日本は加盟国でもないのに、主体性を欠いたまま紛争に巻き込まれる仕組みを、これまで放置し続けてきました。私はこの危険な枠組みを是正し、日本が自らの意思で平和を守れる体制へと整理します。
私は、米軍を追い出すことを目指すものではありません。
今の時代に合わせ、互いに尊重し合える「対等で透明なルール」へアップデートすることです。
沖縄が背負い続けてきた重い負担を全国の政治課題として共有し、国民の納得の上に立つ日米関係を築く。日本の未来と誇りを守るため、私はこの地位協定の改定に、沖縄の地から全力で取り組みます。
03
張子の抑止力では国は守れない。
──―装備より先に必要な「法的継戦能力」を整える
政府は「継戦能力」を繰り返し強調し、装備・弾薬・生産基盤・サプライチェーンの強化を進めています。防衛産業を「防衛力そのもの」と位置づける発言もあります。
しかし、抑止力や継戦能力は「モノ」だけでは成立しません。
いざ有事や国際任務の現場で、国際人道法(戦時国際法)違反が疑われる事態が生じたとき、わが国が
- 独立性・透明性をもって事実を調査し
- 国内で捜査・立件・処罰し
- 国内外に説明責任を果たす
この能力――私はこれを「法的対処能力(法的継戦能力)」と呼びます――が欠けたままなら、どれほど装備が整っていても、戦略的には「負け」ます。
なぜか。国際的信頼を失えば、同盟国からの協力が滞り、国内外の世論も敵対的になり得るからです。弾薬の供給が途切れるのが「補給の遮断」だとすれば、信頼の崩壊は「外交的な補給線の遮断」です。これは致命的です。
装備ばかりを急いで「戦える形」をつくり、法整備を後回しにする――それは実体のない「張子の抑止力」を積み上げることに他なりません。私はここで、政府に立ち止まるよう迫ります。
いま政府に突きつけるべき問い
私は国会の場で、政府に次の点を端的に問います。
- 政府が言う「継戦能力」に、国際人道法違反が疑われた際の捜査・立件・処罰・説明責任まで含まれているのか
- 戦争犯罪や人道に対する罪を、日本の国内法で直接立件・訴追できる規定は整っているのか
- 「知って止めなかった」「知るべき立場で放置した」上官を処罰する、いわゆる指揮官責任(上官責任)を国内法で問えるのか
政府が「継戦能力」を語るなら、弾薬や工場だけではなく、まずこの土台を示すべきです。
なぜ今、法整備が必要なのか
装備が高度化し、射程が伸び、判断が高速化するほど、誤認・誤爆・規律違反が起きるリスクは増えます。
そのとき「日本は自分で調査し、自分で裁けるのか」という問いに答えられない国は、国際社会で正統性を保てません。
私は、国際標準に沿って以下の整備を進める必要があると考えます。
- 戦争犯罪・人道に対する罪などを、国際標準に沿って国内法上「体系」として明確化
- 指揮官責任(黙認・監督義務の懈怠等)の明確化
- 重大犯罪の時効の扱い(不適用を含む)の検討
- 「重大かつ明白に違法な命令」への歯止めを明文化し、現場の隊員を守る
これは自衛隊を縛るためではありません。
自衛隊と国家の正統性を守り、国際的信頼を維持することで、抑止力を「本物」にするための法整備です。
04
国内で起きうるジェノサイドにつながる扇動を止める。
──表現の自由を守りながら「扇動」だけを最小限・厳格に扱う
私が問題にしているのは、「不快な言論」を広く取り締まることではありません。
表現の自由は民主主義の基礎であり、最大限尊重されるべきです。
そのうえで国際社会は、例外的に次の行為を別枠として扱います。
- 特定の集団に対し、差別・敵意・暴力をあおり、現実の加害につながり得る「扇動(incitement)」
狙いは「気に入らない意見を封じる」ことではなく、次の加害を予防することです。
関東大震災の教訓と、ジェノサイド条約加盟の必要性
関東大震災の混乱の中で、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが広がり、軍や警察、自警団によって数千人ともいわれる朝鮮人が虐殺されるという、痛ましい歴史がわが国にはあります。
社会不安が高まるとき、デマと憎悪は、特定集団への暴力を引き起こします。
このような悲劇を二度と繰り返さないという国際社会の誓いが、集団殺害を予防し処罰することを定めた「ジェノサイド条約」です。
しかし、関東大震災における朝鮮人虐殺という重い過去を持ちながら、日本はこのジェノサイド条約をいまだに批准していません。これは、国際社会における日本の人権意識が問われる、極めて深刻な問題です。
そして今はSNSの時代です。デマや扇動の拡散速度も規模も、当時とは比較になりません。だからこそ、「扇動」をどう扱うかは、差別問題であると同時に、国内の安全と統合(そして外国からの影響工作に対する脆弱性)にも関わる喫緊の課題です。
私は、日本の国際的信頼を回復し、ジェノサイドにつながるいかなる扇動にも国家として断固として立ち向かう意志を示すため、ジェノサイド条約の速やかな加盟(批准)を実現します。
現行法の限界
現行の刑法(名誉毀損、侮辱など)は、基本的に「個人」を守る枠組みです。
そのため、次のような「集団を標的にした扇動」や「拡散で危険が積み上がるケース」を、体系的に捉えにくい限界があります。
- 被害者が個人として特定されない「集団標的型」
- SNSで反復・拡散し、危険が累積する事案
- 切迫性・蓋然性など「危険の程度」をどう評価するかの難しさ
私が提案する現実的な第一歩
私は、いきなり広範な言論規制をつくるべきだとは考えません。
むしろ、表現の自由を守るためにこそ、まず「扇動」をめぐる論点を丁寧に整理すべきだと提案します。
- 日本が批准する国際人権規約(ICCPR)が求める「扇動」禁止の位置づけの確認
- 国連「ラバト行動計画」などを参照し、
文脈/話者の影響力/意図/内容・形式/拡散/切迫性
といった評価要素を、日本の議論の共通土台にする - 外務省・法務省・内閣府が連携した、横断的な検討の場を設ける
結論
定義は明確に、規制は最小限に、運用は厳格に。
それによって初めて、言論の自由を不必要に萎縮させず、本当に危険な扇動だけを止める「防波堤」をつくれます。
付録:よくある質問(テーマ4関連)
Q.「扇動」って何ですか?
Q. ヘイトスピーチとどう違いますか?
Q. 言論統制になりませんか?
05
報復の連鎖を断ち切れ。沖縄を「北東アジア平和枠組み」の拠点に
――入口は危機回避、出口は非核地帯。
「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」――この言葉は、報復の連鎖が止まらない北東アジアの危険な現実を映しています。米国の戦略爆撃機の展開、北朝鮮の核搭載能力を誇示する発射、台湾海峡をめぐる緊張、そして沖縄へのミサイル部隊配備と住民避難計画。いま「最前線」に置かれているのは沖縄です。
私はこの状況を、軍拡競争で「上書き」するのではなく、戦争を起こさないための枠組みづくりへと転換します。その現実的な手段として、私は北東アジア非核兵器地帯(NEA-NWFZ)を「最終目標」に据えつつ、そこへ至る段階的プロセスを提案します。
ただし、ここで重要なことがあります。北朝鮮は、韓国とも事実上断交状態にあり、核保有が体制の「国是」と化している。最初から「非核」を前面に出せば、対話の入口そのものが閉ざされる恐れが高い。そこで当面は、偶発衝突を防ぐ危機管理と緊張緩和から着手し、信頼醸成の先に非核化へ進みます。これが、現実を踏まえた外交の設計です。
沖縄を「軍事の最前線」から「外交の拠点」へ
沖縄は、戦争の痛みと基地負担の現実を背負いながら、東アジアの主要地点に接する地理的条件を持つ。だからこそ沖縄は、軍事的圧力を強める場所ではなく、対話の土台をつくる場所になり得ます。私は沖縄を、北東アジアの危機管理と信頼醸成のための「平和外交ハブ」へと転換します。
最大の難関:台湾問題をどう乗り越えるか
この枠組みが実効性を持つには、朝鮮半島だけでなく、最も緊迫する台湾海峡の安定が不可欠です。そのためには当事者である中国、そして域外から深く関与する米国の参加が欠かせません。
しかし、「台湾を独立国家として扱うか否か」という政治的地位の問題を正面から掲げれば、議論は即座に行き詰まり、枠組み自体が始まる前に崩壊します。日本の世論も敏感に反応するでしょう。
だから私は、政治的地位の争点は棚上げし、実務から始めるという現実路線を提案します。
- 台湾を「国家」ではなく、不可欠な「当事者」として扱う
二元論(国家か否か)に陥らず、台湾海峡の平和と安定に責任を持つ「当事者(entity)」として、オブザーバー参加など実質的関与を可能にする形式を模索します。 - 目的を「武力衝突の回避」一点に絞る
この枠組みは、台湾の地位を決める場ではありません。目的はただ一つ、台湾海峡で決して武力衝突を起こさせないことです。この一点に絞ってこそ、立場の違う当事者間に最低限の共通利益をつくれます。
段階的ロードマップ:入口は危機回避、出口は非核地帯
1)入口:まず「撃ち合わない仕組み」をつくる(対話の開始条件を下げる)
最初に合意を目指すのは、体制変更や降伏を迫る議題ではありません。北朝鮮に対しても、最初から「非核」を突きつけるのではなく、偶発的衝突を防ぐ最低限のルールから入ります。
- 危機管理チャンネル/ホットラインの整備(多層型:米中、日中、米韓、必要に応じ第三者仲介を含む)
- ミサイル発射・大規模演習等の事前通報や透明性措置(誤認・誤爆のリスクを減らす)
- 海空域での偶発衝突回避ルールの整備と遵守
これは「譲歩」ではありません。沖縄と日本の命を守るための実務です。
2)中間:次に「軍拡の連鎖を止める」限定合意へ(信頼を積み上げる)
危機回避が機能しはじめたら、次は限定的で検証可能な合意を積み上げます。
- 追加配備や挑発行為の抑制・凍結(freeze)を含む緊張緩和策
- 人道・医療・災害対応など、合意しやすい非軍事協力の拡大
- 住民保護(避難・医療・通信)の国際協力を、沖縄から具体化する
3)出口:最終目標として「北東アジア非核兵器地帯」へ(非核は「到達点」に置く)
その先に据えるのが、北東アジア非核兵器地帯(NEA-NWFZ)です。非核は「入口の条件」ではなく、信頼を積み上げた末の到達点として実現します。
- 段階的参加や検証手続を含む、現実的な制度設計
- 核兵器国を含む安全保障上の保証の枠組みを検討
- 「共通の、協力的、かつ包括的な安全保障」の中に非核を組み込む(単独の理想論にしない)
結論:沖縄を「最前線」から「平和の触媒」へ
北朝鮮の現実、台湾問題の複雑さ、米中対立――このどれか一つに正面から踏み込めば、対話の扉は閉じます。だから私は、入口は危機回避と緊張管理、出口は北東アジア非核兵器地帯という、現実的で段階的な道筋を提示します。
沖縄を「最前線」のままにしない。沖縄を、地域の緊張を下げ、戦争を未然に防ぐ「平和の触媒」に変える。
それが、報復の連鎖を断ち切り、命を守る政治です。
